ウイスキーと焼酎の違いは?法律や原料・製造方法の観点から解説
ウイスキーと焼酎はどちらも蒸留酒の一種であり、飲み方もそれぞれストレートやオン・ザ・ロック、水割りなどがあり共通しています。
しかし、ウイスキーと焼酎の特徴はそれぞれ異なり、味や香り、見た目もまったく違うお酒です。
では、ウイスキーと焼酎は具体的にどこが違うのでしょうか。
この記事ではウイスキーと焼酎の違いについて、酒税法上の扱いや原料、製造方法、色や味などの観点から詳しく解説します。
ウイスキーと焼酎の違いとは
ウイスキーと焼酎は、どちらも原料を発酵させた醪(もろみ)からアルコール分を蒸留したあとに熟成して造られる蒸留酒の一種です。
しかし、ウイスキーと焼酎には、酒税法上の定義や原料の違いがあります。
それぞれの違いについて、以下で見ていきましょう。
酒税法上のウイスキーと焼酎
日本におけるウイスキーと焼酎は、酒税法により以下のように定義されています。
お酒の種類 |
酒税法上の定義 |
ウイスキー |
発芽させた穀類及び水を原料として糖化させて発酵させたアルコール含有物を蒸留したもの |
連続式蒸留焼酎 |
アルコール含有物を連続式蒸留機により蒸留したもの(アルコール分が36%未満のもの) |
単式蒸留焼酎 |
アルコール含有物を連続式蒸留機以外の蒸留機により蒸留したもの(アルコール度数が45%以下のもの) |
※国税庁「酒のしおり(平成30年3月) 3酒税法における酒類の分類及び定義」より一部引用
連続式蒸留焼酎は「甲類焼酎」とも呼ばれ、主にチューハイのベースなどに使われる焼酎です。
単式蒸留焼酎は「乙類焼酎」や「本格焼酎」とも呼ばれ、芋や麦、米などを原料とした焼酎や泡盛などが挙げられます。
本格焼酎は原料由来の独特の風味を楽しむために、オン・ザ・ロックや水割りなどで飲まれることが多いお酒です。
上の表をみると、焼酎については製造方法とアルコール度数が定義されています。一方、ウイスキーは原料と製造方法は定義されているものの、アルコール度数に関する記述はありません。
しかし、一般的に販売されているウイスキーのアルコール度数は約40~60%です。
原料の違い
ウイスキーの原料は、上の表にもある通り「発芽された穀類・水」のみです。
ウイスキーの原料に使われる穀類には大麦、トウモロコシ、ライ麦、小麦などがあり、原料によって「モルトウイスキー」「グレーンウイスキー」「ブレンデッドウイスキー」など名称が異なります。
一方、連続式蒸留焼酎の原料は廃糖蜜や酒粕、麹などです。
単式蒸留焼酎の原料は麹、芋や米、麦、そば、サトウキビなどさまざまなものが使われます。
単式蒸留焼酎の中でも本格焼酎に分類されるものについては、原料に使用できる食材が細かく決められています。
本格焼酎の原料として酒税法で認められている食材は穀類か芋類を原料とする麹、野菜やお茶、海藻やキノコ、木の種子や果実、乳製品などです。
つまり、ウイスキーよりも単式蒸留焼酎の方が多彩な原料から造られていることがわかります。
原料の違いは、ウイスキーと焼酎の味や風味などそれぞれの個性を生む要素です。
ウイスキーと麦焼酎の製造工程による違い
ウイスキーと麦焼酎は同じ原料から造られますが、糖化方法や発酵の仕方の違い、熟成期間と熟成方法の違いがあるため、まったく異なるお酒に仕上がります。
そして、製造工程の違いにより完成品の色や香りにも違いが出るのです。
ここでは、それぞれの違いについて解説します。
糖化方法による発酵の仕方
糖化とは、原料に含まれるデンプンが酵素によって糖に分解されることです。
また、糖が酵母によってアルコール化することを発酵と言います。 焼酎造りとは違い、ウイスキー造りでは麹を使いません。
ウイスキーの原料である穀物が発芽するときにデンプン消化酵素が活性化されます。
その酵素によって原料の糖化が進み、発酵してアルコールに変わります。
それに対し、焼酎造りでは麹の酵素を使い原料を糖化・発酵させることが、ウイスキー造りと違う点です。
ウイスキーと焼酎を区別するために、発芽した穀類を焼酎の原料に使用することは酒税法で禁止されています。
こうした糖化方法の違いや発酵の仕方の違いは、できあがるお酒の味にも大きな影響を及ぼす要素です。
熟成期間・方法
ウイスキーはオークなどの木樽で長期間熟成させます。
それに対し、麦焼酎はステンレスやホーローのタンクで熟成させ、期間も短いことが特徴です。
ウイスキーの一般的な熟成期間は3〜10年ほどですが、なかには20〜30年もの長い間熟成させる銘柄もあります。
長い年月をかけて熟成させることで木樽の色や成分がウイスキーに溶け込み、独特の色や香りを与えるのです。
一方、焼酎は一般的に1〜3カ月程度熟成させて出荷されます。
これは、焼酎が完成してから余分な油や臭みの原因となるアルデヒド類が抜けるまで、1~3カ月かかるためです。
つまり、焼酎は短期間の熟成を経て酒質が安定したら、すぐにおいしく飲めるお酒と言えるでしょう。
ただし、3カ月以上の長期熟成をさせる焼酎もあり、熟成段階には3〜6カ月の「初期熟成」、6カ月〜3年の「中期熟成」、3年以上の「古酒」の3段階があります。
長期熟成させる焼酎として有名なものが、日本最古の焼酎ともいわれる泡盛です。ただし、泡盛の原料は麦ではなく米(タイ米)が使われています。
色
ウイスキーは美しい琥珀色をしていますが、焼酎は無色透明です。
ウイスキーを数年から数十年間といった長期間に渡り木樽で熟成させる間に、木樽からタンニンなどの成分が溶け出すことでウイスキーに琥珀のような色とスモーキーな香りや味わいが移ります。
焼酎は熟成期間がウイスキーよりもずっと短く、ステンレスやホーローのタンクで熟成されるため、熟成期間中に容器から何らかの成分が溶け込むことはありません。
そのため、熟成が終わっても無色透明のままです。
また、ウイスキーよりもスッキリとした味わいになります。
焼酎を木樽で長期間熟成させれば、ウイスキーのような色合いや風味を出すことも可能です。
しかし、焼酎には「着色度(色の濃さ)をウイスキーやブランデーの1/5〜1/10以下の値にしなければならない」という規制が設けられています。
そのため、ウイスキーのように濃い色が付いた焼酎を見かけることはありません。
ウイスキーと焼酎は同じ蒸留酒でもまったく違うお酒
ウイスキーと焼酎は、使われる原料や糖化方法、熟成期間や方法が異なるため、お酒の色や香り、味わいも異なります。
また、アルコール度数も異なりウイスキーは40~60%、焼酎は主に20%・25%の製品が中心です。
ウイスキーと焼酎にはそれぞれ違う魅力があるため、お酒を飲むシーンや気分によって選んでみてはいかがでしょうか。
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