日本酒のランクとは?普通酒、醸造酒、純米酒の違いを解説
自分の口に合う日本酒を探したい人にとって、日本酒のランクが一つの基準になる場合もあるかもしれません。
日本酒は精米歩合や原料によって普通酒、醸造酒、純米酒の3種類に大別されます。また、精米歩合や原料が日本酒のランクを付ける基準です。
この記事では日本酒ランクの規定や、日本酒の種類による違いについて解説します。
自分にとって最高の1本を選ぶための参考にしてください。
日本酒のランクとは?
ヨーロッパにおいてワインの生産が盛んな国々では、EUまたは各国で定めるワイン法の規定によって、ワインの格付けが行われています。
では、日本酒にも同様の等級付けがされているのでしょうか。
結論から言うと、以前は国による日本酒の等級付けがありましたが、1992年に廃止されています。
以前は国税局によって「特級」「一級」「二級」といった等級が付けられ、等級によって異なる酒税が課されていました。
等級付けの基準は味わいや香り、アルコール度数など、酒類審議会による総合的な品質審査によって決められていました。
しかし、日本酒の造り方が多様化していくに従い、旧来の等級付けだけで日本酒の品質を評価できるのかという疑問が出てきました。
それを反映して国税局による等級付けを廃止 し、酒税は一級と二級の中間程度に統一されることになったのです。
現在は特撰、上撰、佳撰で分類
1992年に国税局による日本酒の等級付けが廃止された後は、日本酒の蔵元やメーカーがそれぞれ、独自の基準で分類する「特撰」「上撰」「佳撰」といったランク付けが登場しました。
それぞれのランクを判定する基準は、以前と同様に味わいや香り、アルコール度数などを官能審査するものです。
判定基準は蔵元やメーカーごとに異なるものの、一般的には、「特撰」が昔の「特級」、「上撰」が昔の「一級」、「佳撰」が昔の「二級」に相当すると考えてよいでしょう。
現在の日本酒のランクは特定名称の呼び方が一般的
現在、日本酒を選ぶときの基準には、「特撰」「上撰」「佳撰」などメーカーごとに定めるランクよりも、「特定名称」を参考とするほうが一般的になっています。
特定名称とは、メーカーを超えて日本酒全体で統一された分類基準です。下表のように、日本酒造りに使う米の精米歩合や原料、醸造法などが特定名称の基準とされています。
ランク |
精米歩合 |
原料 |
備考 |
|
特定名称 |
大吟醸酒 |
50%以下 |
米、米麹、 醸造アルコール |
|
純米大吟醸酒 |
50%以下 |
米と米麹のみ |
||
吟醸酒 |
60%以下 |
米、米麹、 醸造アルコール |
||
純米吟醸 |
60%以下 |
米と米麹のみ |
||
本醸造酒 |
70%以下 |
米、米麹、 醸造アルコール |
精米歩合60%以下あるいは特別な醸造法を用いたものは「特別本醸造」という |
|
純米酒 |
規定なし (精米歩合の表記は必要) |
米と米麹のみ |
精米歩合60%以下あるいは特別な醸造法を用いたものは「特別純米」という |
|
普通酒 |
精米歩合や原料、醸造法の規定なし |
表の通り、特定名称の分類基準は大きく分けて「純米酒かどうか」「精米歩合」の2つです。それぞれについて、次で詳しく説明します。
純米酒(米と麹だけで造られている)かどうか
酒造りに使われる原料で日本酒を大きく分類すると、米と米麹のみで造られる「純米タイプ」と、米・米麹にくわえて醸造アルコールも使用して造られる「アルコール添加タイプ」の2つに分けることができます。
「純米タイプ」はすべて「純米酒」「純米〇〇(大吟醸酒・吟醸酒)」という名称です。
一方、「アルコール添加タイプ」には「大吟醸酒・吟醸酒・本醸造酒」があります。
醸造アルコールとは穀類やサトウキビなどを発酵させた後に蒸留して造られたものです。添加物というとネガティブなイメージを抱かれがちですが、日本酒造りにおける醸造アルコールは決して悪いものではありません。
醸造アルコールを加えることによって日本酒独特の華やかな香りが立ちやすくなったり、キレのよい味わいになったりします。
蔵元オリジナルの醸造アルコールを使用する場合もあり、日本酒の個性を出す手法の一つと言えるでしょう。
精米歩合(米をどれだけ削っているか)
原料による分類方法をベースとして、さらに細かく分類する基準となるのが「精米歩合」です。
収穫された米はもみ殻の付いた玄米の状態から、食用や日本酒の原料用に表面を削られます。
それを精米といい、精米歩合とは「米の表面をどれだけ削っているか」を数字(%)で表すものです。
「精米歩合」は削られた後に残った部分の割合を示すため、数字が小さいほど「精米歩合が高い」「高精米」という意味となります。
それに対し、「表面を削った割合」を意味するのが「精白率」です。
例えば、精米歩合60%は精白率40%と同じことを表します。
「アルコール添加タイプ」は、精米歩合が高い順に「大吟醸酒・吟醸酒・本醸造酒」などにランク分けされます。
「純米タイプ」の場合は、精米歩合が高い順に「純米大吟醸酒・純米吟醸酒・純米酒」です。
純米酒、醸造酒、普通酒の味わいの違いは?
それでは、純米酒、醸造酒、普通酒では、味わいにどのような違いがあるのでしょうか。純米酒の味わい
米が持つ本来の甘みやコク、ひかえめな香りなどを楽しめるのが純米酒の特徴です。飲み方は常温やお燗などが向いています。
精米歩合が高い純米大吟醸酒や純米吟醸酒の場合は、大吟醸酒や吟醸酒のように華やかな香りを引き出しつつ、米の味わいや風合いもしっかり残していることが、大吟醸酒や吟醸酒との違いと言えるでしょう。
醸造酒の味わい
醸造酒は「吟醸香」と呼ばれる華やかな香りが強いことが特徴です。
同じ醸造酒でも、精米歩合が高いほどフルーティでスッキリとした香りが際立つと言われています。
吟醸香は10℃前後の低温で時間をかけて発酵・熟成させる「吟醸造り」という製法によって引き出されるものです。
キレのよい涼やかな味わいも醸造酒の特徴のため、どちらかといえば冷やで飲むのに適しています。
普通酒の味わい
普通酒は特定名称の日本酒とは違い、精米歩合や原料、製法に決まりがありません。
その分、低コストで大量に製造できるためリーズナブルな価格で入手できます。
ワンカップや紙パックなどで売られている製品もあり、いつでもどこでも、気軽に楽しめるのが普通酒の魅力です。
普通酒だからといって、特定名称の日本酒よりおいしくないわけではありません。
例えば、「越乃寒梅」シリーズの普通酒はバランスの優れた辛口で人気の製品です。
お酒のランクと味わいを意識すると違いが分かりやすい
日本酒には精米歩合や原料、製法の違いによるランク付けなどで分類され、味わいや香りがそれぞれ、異なります。
どの日本酒を一番おいしいと感じるかは、人それぞれの好みによって、また気温や一緒に楽しむ料理などによって異なります。
まずは、日本酒のランクと味わいの違いを意識しながら、いろいろなお酒を飲み比べてみてはいかがでしょうか。
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