升酒の正しい飲み方とは?由来や魅力、お手入れ方法もあわせてご紹介!
升に日本酒を注いで楽しむ升酒(ますざけ)。
なんとも粋な升酒は、おちょこやグラスなどで日本酒を飲む時とはまた違った美味しさを楽しむことができます。
最近では、もっきりなどの升酒も居酒屋で見かけることが増えてきましたね。
そこで今回は、升酒の楽しみ方について詳しくお話していきます。
まずは「升」について知ろう!
そもそも、升酒に使われる升とは一体なんでしょうか?
升酒の由来や升の種類について見ていきましょう。
升っていったい何?
升酒(ますざけ)の升は、もともとお米や醤油、お酒などを軽量するためのカップとして使われていました。
升に使用されている木材が神事や神社と深い関連のある杉や檜(ひのき)であること、また「増す」「益す」と響きが同じことから縁起物とされ、酒器として使われるようになったのです。
お酒を升で軽量していたなごりから、現在は日本酒の量を表す単位として「升」が使われています。
居酒屋などでよく見かける一合は180mlであり、市販されている日本酒の一升(いっしょう)瓶は1.8Lです。
一升は、一合の10杯分の量だと捉えてください。
升酒で使われる升の種類
升酒に使われる升は、「木升」と「塗升」の2種類に分けられます。
木木升は、文字通り木材で作られている木升のことです。
使用木材は杉、檜、樅(もみ)が一般的で、これらは神事や神社に使われてきたことから縁起のいい木材と言われています。
また、木升は木片を組み合わせて作られているので、「複数の人が木(気)を合わせる」ということからお祝い事にもぴったりと考えられているそうです。
結婚式やお正月などのお祝いごとに、木升を好まれる理由は縁起の良さからきていたのですね。
木木升は、使用されている木材の香りが日本酒にうつることが最大の魅力でしょう。
ふんわりとした香りが合わさった日本酒は、普段グラスで飲む時とはまた異なる風味を感じさせてくれます。
一方、見た目の豪華さでは引けを取らない塗升は、周囲を漆で塗装された升です。
一般的に外側は黒色、内側は赤色で塗られており、家飲みで使えば気持ちが上がること間違いなしなデザインですね。
「木の香りが日本酒にうつるのは苦手...。」という方に試してもらいたい升です。
升酒の正しい飲み方を知ろう
普段おちょこやグラスで飲んでいると、いざ升酒を頼んだ時にどんな飲み方をすればいいのか戸惑ってしまいますよね。
こちらでは、升酒の正しい飲み方についてお話していきます。
升を持つときは4本の指で
まずは、升に直接日本酒を注いでもらった時の飲み方についてチェックしていきましょう。
グラスやおちょこよりも大きな升をしっかり持とうとして、鷲掴みにしながら飲む方も多いと思います。
しかし、升は親指以外の指で底面を支え、親指を縁に添えて飲むのが正しい飲み方です。
片方の手は升に添えると、なみなみと日本酒を注がれてもしっかりと安定しながら飲むことができますよ。
飲むときは角ではなく縁から
四角い形状の升は、ついつい角から飲んでしまいがちですがこれはNGです。
縁の平らな部分に口をつけ、すするように飲んでみてください。
この時、ズズーっと音を立ててしまうのはマナー違反なので気をつけましょう。
もっきりの正しい飲み方とは
もっきりとは升の中にグラスを入れ、そこにお酒を溢れるほど注いでいくスタイルのことです。
居酒屋でもっきりを頼んだ時に、並々と注がれた日本酒にどうやって飲めばいいのか戸惑ってしまう人も多いと思います。
では、もっきりはどうすればスマートに楽しめるのでしょうか?
こちらでは、もっきりの由来や、正しい飲み方を解説していきます。
もっきりとは
もともと、お酒を量り売りしていた江戸時代に、店主が升いっぱいにお酒をとり、お客さんの徳利(とっくり)に移し替えていたことが「盛り切り」と言われていました。
ここから、グラスいっぱいに並々と注ぎ、升まで溢れさせることを「もっきり」と呼ぶようになったそうです。
昔の居酒屋では日本酒を1合で提供することが一般的でしたが、小さめのグラスしかないお店だと1合に満たずに困ってしまう...ということがありました。
そこで、小さなお皿の上にグラスを乗せたり、グラス自体を升の中に入れて溢れるほど注ぐことにより、1合分のお酒として渡していたそうです。
もっきりは、こぼれるほどお酒を注ぐことから「盛りこぼし」と言われることもあるのだとか。
発祥はお客さんに提供できるようにと考えられたシステムでしたが、今はパフォーマンスの一環として親しまれています。
グラスと升のどちらもギリギリまで注いでくれるお店も多く、店側のおもてなしの心も感じられるお酒でしょう。
グラスを傾けて升にお酒を少し注ぐ
もっきりは、店員さんが升とグラスを席まで持ってきてくれ、その場で並々と日本酒を注いでくれることが一般的です。
溢れるほどの量が注がれるので、グラスを升から持ち上げると必ずと言っていいほどこぼしてしまいます。
このため、まずはグラスを傾けて升にお酒を少し移すのがおすすめです。
ただ、「少しでもグラスを動かすと溢れる...!」と思うほどお酒が注がれているときは、グラスに直接口をつけるのもマナー違反ではありません。
二口ほど飲み、グラスを持ってもこぼさないような段階までお酒の量を調整しましょう。
グラスを持ち上げて飲む
持ち上げても溢れないほどの量になれば、グラスを持ち上げて日本酒を口に運びます。
グラスの外側についている日本酒の水滴は、気になるようならおしぼりなどで拭いてしまっても問題ありません。
一度机に置いたグラスは、升に戻さないようにしましょう。
升の日本酒をグラスに移して飲む
グラスの日本酒を全て飲み干したら、升の中に入っているお酒をグラスに注ぎます。
升の飲み方に慣れていない方や、木の香りが苦手な方は、グラスに移し替えることでスマートに楽しむことができますよ。
もちろん、升から日本酒を飲むこともおすすめです。
この場合は、
- 升を4本の指で支えて、親指を縁に置く
- 角からではなく、縁から飲む
というように、先ほどお話した升からの飲み方を実践してみてください。
また、もっきりで日本酒をおかわりする場合は、升を変えずに注いでもらうのがマナーです。
知っておきたい升酒のツウな飲み方
升酒を楽しむために、知っておきたい飲み方をご紹介しましょう。
居酒屋ではもちろん、家でも試してみると日本酒をもっと楽しめること間違いなしです。
升の角に塩を乗せる
升酒を飲むときは、升の角に塩をひとつまみ乗せ、それを舐めながら飲んでみてください。
「塩そのものを舌で舐めるのはちょっと...。」という方は、指に塩をつけ舐めてみるのでも問題ありません。
日本酒には、甘味、旨味、苦味、酸味という4つの味を感じることができますが、唯一塩味が不足しています。
塩を口に運ぶことで塩味がプラスされ、口の中にバランス良く味わいを楽しむことができるのです。
また、塩を口にすることで甘味や旨味を引き立てる効果があると言われています。
夏にスイカを食べる時、よく塩をふることが多いと思いますが、これも甘味を引き立てる効果があるからです。
飲兵衛は塩をつまみにお酒を飲むと言うのはよく聞く話ですし、実際明治時代ではお酒の肴として塩をつまむことも多かったとか。
ちなみに、家で塩をつまみに飲む場合は、ぜひ塩の種類をこだわってみましょう。
ミネラル分が含まれている天然塩なら、塩本来の旨みを感じることができます。
粒が大きめの塩で食感を楽しむのもいいですし、シーズニングソルトなど風味のプラスされた塩でおつまみ感を出しても面白いですね。
自宅でいろいろ試しながら、升酒に合う塩を探してみてください。
升の手入れ方法
升酒を家で楽しむためには、しっかりと升をお手入れしてあげることが大切です。
せっかくウキウキで買ってきた升でも、お手入れ方法が悪いといつの間にかカビが生えていた...ということも起こりがち。
お手入れ方法自体は難しくないので、ぜひ丁寧に取り扱ってみましょう。
升の洗い方
升は杉や檜などで作られていることが多く、その香りを楽しめるのも魅力の一つです。
このため、木のいい香りを消さないためにも、升を洗う際は洗剤を使わず水で洗いましょう。
「水洗いだけで汚れが取れるか心配...。」という方におすすめなのが、洗剤の代わりに塩や重曹を使い、こすりながら洗うことです。
強い殺菌作用がありますし、口に入っても問題ないので、升を洗う際に適していると言えます。
簡単に洗いたいからと食器洗浄機を使いたくなるかもしれませんが、升は急激に乾燥させたり湿気に弱いので厳禁です。
升を洗ったあとは、ふきんで拭いたあと風通しの良いところでしっかりと自然乾燥させてください。
こんな手入れはNG!
良かれと思って行っているお手入れ方法が、もしかしたら升を痛める原因になっているかもしれません。
NGなお手入れ方法をまとめてみたので、ぜひチェックしてみましょう。
【升のNGなお手入れ方法】
- 長時間の水洗いやつけ置き
- 熱湯での殺菌消毒
- 紫外線に当てる
上記を行ってしまうと接着力を弱めてしまい、升のフォルムを歪めたり、紫外線によって木材の寿命を短くしてしまいます。
きちんとしたお手入れを行っていれば、升は長く使える素敵な酒器です。 愛情を持って、しっかりとお手入れしてみてくださいね。
今夜は升にチャレンジしてみよう!
普段、日本酒を飲んでいる方でも家に升を用意している方は少ないかもしれません。
升でお酒を口に運ぶと木の香りをふわっと感じられますし、塗升ならその素敵なデザインにテンションが上がること間違いなしです。
枡を楽しむルールも紹介しましたが、本来お酒は楽しんで飲むものなので、あまり考えすぎずにまずは挑戦してみることが大切でしょう。
ぜひこの機会に、升酒にチャレンジしてみてください。