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酵母によって日本酒の香りが変わる!酵母の働きや種類を紹介

日本酒を作るのに欠かせない存在である酵母。

実は、日本酒の香りや味わいに大きく関係していることをご存知だったでしょうか?

酵母についてマスターすれば、日本酒探しがもっと楽しくなりますよ!

今回は、酵母の役割や主な酵母の種類についてお話していきましょう。

 

酵母とは

酵母とは、肉眼で見えないほどの小さな微生物です。

カビやキノコと同じく菌類に分類され、土や水の中、植物にも生息しています。

酵母の種類は約1,000以上と言われており、私たちの身近に存在しているのです。

日本酒以外にも、味噌やしょうゆなどの発酵食品を作るために使われていますよ。

 

日本酒における酵母の働きとは

酵母は、日本酒を作る上で大切な存在です。

しかし、目に見えない微生物のため、明治時代に顕微鏡が導入されるまで、その存在は周知されていませんでした。

その後研究が進んだことにより、酵母は「アルコールを生み出す」「フルーティーな香りを生み出す」といった働きが明らかになったのです。

 アルコールを生み出す

日本酒の発酵に適したものは、清酒酵母と言われています。

この酵母を使って、日本酒は「並行複発酵(へいこうふくはっこう)」と呼ばれる発酵方法で作られているのです。

急に難しい漢字がきたとゲンナリするかもしれないので、わかりやすく解説していきますね。

日本酒造りの流れを大まかに解説すると、

  • 糖化:こうじがお米に含まれるデンプンを糖に分解する
  • アルコール発酵:酵母が糖をアルコールに分解する

 となっています。

この糖化とアルコール発酵は同時に行われているので、「並行」と名前のついた発酵方法になったのですね。

このように、日本酒のアルコールは、酵母がこうじによって作られた糖を食べることで生み出されたものでした。

 香りを生み出す

酵母は、日本酒を発酵する中で大きく分けて2種類の香りを生み出します。

  • 酢酸イソアミル:爽やかで青い香り(バナナや洋梨のような香り)
  • カプロン酸エチル:フルーツの甘い香り(リンゴやメロンのような香り)

どちらの成分が多く含まれているのかで、その日本酒の香りや風味が変わってくるのです。

ひとまとめに「吟醸香」と言われる2つの香気成分ですが、性質は全く異なります。

例えば、高い温度で感じやすくなる酢酸イソアミルに比べ、カプロン酸エチルは温度が上がると感じにくくなります。

このため、カプロン酸エチルを活かしたお酒は、火入れを行わない生酒として出荷することも多いんだとか。

匂いの好みによって、飲むときの温度も変えてみるといいかもしれませんね。

 

酵母の種類を紹介!

 では、ここからは酵母の種類について紹介していきます。

 きょうかい酵母

「きょうかい酵母」とは、日本醸造協会が管理している酵母のことです。

明治時代、酒蔵ごとにばらつきのあった日本酒の質を安定させるために、販売が始まりました。

日本醸造協会は、各種の品評会で受賞した蔵元の酵母を収集・培養し、蔵元へ販売を行なっていましたが、現在では酵母を独自に開発しています。

日本酒の他にも、ワインや焼酎の酵母も販売していますよ。

【主なきょうかい酵母】

協会1~5

明治から大正時代にかけて、販売されていた酵母です。

様々な品評会や鑑評会で入賞した日本酒の酵母から培養されたものであり、これらの酵母が販売されたことで全国における日本酒の質が向上しました。

現在では配布されていないので、ほとんど使用されることはありません。

協会6

1935年に秋田県・新政酒造で誕生しました。

現在使われている酵母の中では、最も歴史が長いものでしょう。

香りは穏やかで、ソフトな酒質になります。

協会7

1946年に長野県・宮坂醸造の「真澄」から抽出されました。

華やかな香りが特徴で、普通酒から吟醸酒まで使用頻度が高い酵母です。

協会9

1953年に熊本県酒造研究所で抽出されました。

「熊本酵母」と呼ばれるこの酵母は、67号と同じように低音でよく発酵します。

吟醸酒の誕生に一役買った7号よりも、香りが高く、酸をしっかりと感じられる酵母と言えます。

協会10

「小川酵母」または「明利酵母」と言われています。

軽快な酒質が特徴で、醪の発酵は低温で長期間になるのだとか。

香りが上品なので吟醸酒に向いていますが、酸が少ない純米酒に適しています。

協会11

アルコール添加後も死滅しにくい特徴があります。

こちらの酵母を使うとリンゴ酸が多く生成され、アミノ酸が少なく、色の薄い日本酒になるのだとか。

協会14

1996年に金沢国税局鑑定官室で誕生した、「金沢酵母」と呼ばれる酵母です。

香りのバランスが良く、淡麗な酒質が特徴でしょう。

9号に近い性質を持っており、特定名称酒にも向いています。

協会15

秋田県で育成された「秋田酵母」と呼ばれる酵母です。

7号の自然変異系と考えられており、低温長期型の発酵に適しています。

リンゴ酸のような香りが特徴の、エチルエステル系の香気が高くなるようです。

協会16

日本醸造協会が独自に開発した酵母です。

酸が少ないことから「少酸性酵母」と言われています。

純米酒や吟醸酒に向いている酵母でしょう。

協会1701

香りの成分を多く生成する酵母です。

吟醸香にとって理想的な酵母とされており、バランスの良い香りの酒質を作ることができます。

協会1801

吟醸酒のニーズ増加に伴い、華やかな吟醸香を生み出すために2006年に開発された酵母です。

全国新酒鑑評会に出品する日本酒は、1801号を使って金賞を獲得しているところも多くあります。

協会1901

2014年に協会が開発した最新の酵母です。

尿素を生み出さない酵母であり、海外輸出向けに期待が高まっています。

 自治体酵母

日本醸造協会が販売する酵母の他に、全国の自治体が独自に新たな酵母を開発しています。

 

「オリジナルの地酒を作りたい」「地元の気候や土地にあった酵母を使いたい」といった想いから、様々な酵母が生み出されているのです。

その土地の良さを最大限に活かした日本酒を作るために、各地域のお米を用いた酵母も作られています。

 

 

【主な自治体酵母】 

うつくしま夢酵母 

福島県酒造関係者の「出品酒にも使用できる香り高い吟醸用酵母が欲しい!」との声から作られた酵母です。

特有のフルーティーで華やかな香りと、マイルドな口当たりが特徴の酒質を作ることができます。

AKITA雪国酵母 

秋田県で開発された酵母です。

日本酒の海外進出を視野に入れて、環境に左右されず香りや風味を損なわないための酵母を開発しました。

リンゴとメロンのような極上の香りを引き出すとして、秋田県内でも多くの酒蔵が使用しています。

長野酵母R

2019年に長野県で開発された酵母です。

ふくらみのある香りと、リンゴ酸由来の酸味感が特徴でしょう。

静岡酵母

柔らかい果実のような香りを引き出す酵母です。

全国新酒鑑評会に出品した静岡の21蔵中、17蔵が入賞し、10蔵が金賞を獲得するといった快挙がありましたが、これは静岡酵母が関係していると言われています。

 蔵付き酵母(くらつきこうぼ)

古くから、それぞれの蔵元に住み着いている酵母であり、「家付き酵母(いえつきこうぼ)」とも言われています。

きょうかい酵母が普及されるまでは、この蔵付酵母を使って日本酒を造っていました。

長年に渡って日本酒を醸造してきた酒蔵では、日本酒造りの過程で生き延びた酵母が建物や土などに付着しています。

そのため、美味しい日本酒を造る蔵元には、良い酵母が存在すると言われていました。

蔵元の個性が出る蔵付き酵母ですが、きょうかい酵母を培養させた日本酒造りが主流となっている今、蔵付き酵母を使う酒蔵は減ってきています。

 花酵母

名前の通り、花の蜜などから抽出した酵母です。

東京農大の中田久保教授が、世界で初めて誕生させました。

 ナデシコやヒマワリ、サクラやマリーゴールドなど、14種類以上もの花酵母が出回っています。

香り高く、甘みが強い花酵母は、日本酒マニアを驚かせるような味わいを堪能させてくれるでしょう。

 

泡あり酵母・泡なし酵母とは

以前、全ての酵母には泡が発生していました。

泡の状態を見れば発酵の状態が分かるといったメリットがありますが、

  • 泡によってもろみがタンクからこぼれて無駄になってしまう
  • 泡が溢れると発酵が鈍る原因になる
  • 泡を消すために夜通し当番を設置しなければいけない

などのデメリットも存在したのです。

泡なし酵母が偶然出現してから、良い泡なし酵母を求めて研究が進められました。

泡なし酵母は管理がしやすいため、近代で使用する蔵元も増えています。

きょうかい酵母では、9号と901号のように、泡なし酵母の号数に「01」を付けて区別しているのです。

 

生酒のスパークリングは酵母が関係していた!

スパークリング日本酒とは、パチパチと炭酸を感じられるお酒のことです。

初心者にも人気のスパークリングは、酵母とも大いに関係がありました。

 酵母は、「こうじが作った糖をアルコールに分解させる」とお話しましたが、実はその際に二酸化炭素を発生させます。

つまり、酵母が生きた状態で日本酒が瓶詰めされると、酵母の活動が続いてガス感を感じられる日本酒になるのです。

 

 火落ち菌とは

日本酒は、平均アルコール度数が15%と、様々なお酒の中でもアルコール度数が高いお酒です。

通常、アルコール度数が10%もあれば、大抵の菌は生存できなくなってしまうのですが、日本酒造りに欠かせない「清酒酵母」はもちろん、「火落ち菌」も活動を続けることができます。

火落ち菌とは乳酸菌の一種なのですが、これが繁殖すると日本酒に含まれる乳酸が爆発的に増えてしまい、とても飲めない酸っぱい香りへと変化してしまうのです。

一度火落ち菌が発生してしまうと、完全に菌が消えるまでに何年もかかると言われています。

火落ちが原因で日本酒の酒質が変わってしまうことを「腐造」と言いますが、これによって廃業までしてしまう酒蔵もあるほど、火落ち菌の存在は造り手を悩ませています。

 火落ち菌をなくすために
 火入れが行われる

頭を悩ます火落ち菌をなくすため、酒造では通常2回の火入れを行なっています。 

火入れが行われるのは、「並行複発酵」によってできたもろみを、「お酒」と「酒粕」に分けた後です。

絞ったお酒は、酵母や火落ち菌など様々な雑菌が生きており、不安定な状態になっています。

そこで、雑菌の活動を止めるために火入れを行います。

火入れと聞くと直接火を通して温める作業のように思いますが、実際は日本酒の温度が60~65度になるよう湯煎で温める作業のことです。

この火入れを、もろみを絞った後と瓶詰めをした後に行いますが、この時決して悪い菌ではない酵母も活動を停止してしまいます。

 生酒は低温管理で
 火落ち菌の発生を防ぐ

このように、火入れを行ったお酒は酵母が活動できなくなるので、二酸化炭素を発生することもなくなり、ガス感を感じません。

しかし、火入れを行わない生酒なら、シュワシュワとした炭酸を感じることができるのです。

生酒は火入れを行わずに、マイナス5℃などの低温で管理して、火落ちが発生する確率を限りなく下げます。

ただ、火落ち菌が消えている訳ではないので、購入後の管理を誤ってしまうと、すぐに火落ち菌が発生してしまうことも。

生酒は、火落ちしてしまい、酸っぱい香りになってしまうことや、酵母が生きているからこそ、ちょっとしたことで味が変わることもあるのです。

生酒を購入後は、火落ち菌を発生させないためにマイナス5℃で保管することが大切です。

酵母が活動できるため、シュワシュワっとした新鮮で、フレッシュな味わいを楽しめる生酒をぜひ飲んでみてくださいね!

 今は火入れをしているのに
 炭酸を感じられる日本酒もある! 

今までは、「火入れ=スパークリングを発生させない」が常識でしたが、火入れ技術の向上により、フレッシュで炭酸を感じられる日本酒も作られてきました。

急速にお酒を温め、急速に冷やすことにより、酵母を完全に活動を止めないので、炭酸を感じることができるのです。

このように作られた日本酒なら、家での保管も生酒ほど敏感になる必要はないので、気楽に楽しむことができますよね。

 

酵母の働きは日本酒にたくさんの影響を与えている!

アルコールや炭酸ガスを発生させ、風味や香りにも影響を与えている酵母。

日本酒を語る上では、絶対に欠かせない存在です。

酵母マスターになれば、日本酒を探す際にも新たな視点から考えることができますよね!

ぜひ、酵母の種類や働きを覚えて、日本酒ライフを充実させましょう。

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