男酒、女酒って何?水の硬度が関係していた!
「男酒」「女酒」という言葉を聞いたことはありますか?
「え、日本酒に性別があるの?」と思ってしまいがちですが、実は日本酒造りに使う水が関係していました。
今回は、日本酒づくりに欠かせない水について解説していきましょう。
男酒、女酒とは?
男酒、女酒とは、日本酒造りに使う水の硬度によって分類されます。
詳しくみていきましょう。
男酒は硬水で造られた辛口の日本酒
男酒とは、ミネラルがたっぷりと含まれた硬水で造られたお酒です。
マグネシウム、リン、カリウムなどのミネラルは日本酒造りの際に酵母の栄養分になります。
そのためお酒の発酵が早く進み、酸が多いキレのある日本酒が出来上がるのです。
男酒の代表は、兵庫県の灘で造られた日本酒ですね。
新酒の時は荒々しさを感じられるので、「男酒」と呼ばれていますが、貯蔵をすることで角の取れた丸いお酒にもなります。
女酒は軟水で造られた
なめらかな日本酒
女酒は、ミネラルの少ない軟水で造られた日本酒です。
硬度の低い水を使うことで発酵がゆっくり穏やかに進み、なめらかな口当たりが特徴のお酒に仕上がります。
女酒の代表は、京都府の伏見で造られた日本酒です。
味の対比を示すために、「灘の男酒、伏見の女酒」といった言葉が使われます。
ミネラルは日本酒にどんな関係があるの?
硬度が高い水に多く含まれる、カリウムやマグネシウムなどのミネラル。
これらは具体的にどんな働きをするのでしょうか?
微生物の栄養となるカリウム
カリウムは酵母などの微生物における栄養となり、発酵を促進させます。
元々、お米にはカリウムが含まれているのですが、洗米などをしている時に水へと溶け出してしまうのです。
このため、水からカリウムを補給することで、美味しい日本酒を作ることができます。
こうじ、酒母、もろみの
発酵を助けるマグネシウム
カリウムと同じように、微生物の栄養となり、発酵を進ませる働きをします。
ちなみに、水の硬度は水中に含まれるカリウムとマグネシウムの量を表したものです。
どちらも発酵に深く関わる要素なので、ミネラルが多い硬水の方が、早く発酵するのも納得ですね。
発酵を促進する無機リン
こちらもマグネシウムと同様に、発酵を促す要素です。
実はお米にも有機リンと呼ばれる物質がいますが、無機リンではないと意味がありません。
日本酒を造っていく際に、お米内の有機リンは無機リンへと変わります。
ただ、その量では足りないので、ミネラルが入った水から無機リンを取り込むことが必要なのです。
水に含まれる鉄・マンガン・
銅は不要な成分
日本酒造りに欠かせない水ですが、実はお酒に悪影響を与える成分もあります。
それが、「鉄・マンガン・銅」の3つなのです。
まず、鉄ですが、日本酒を褐色に変化させて、風味も損なわせる働きをしてしまいます。
銅もお酒の色を変えてしまう原因になり、マンガンは日本酒最大の敵である紫外線からの劣化を早めてしまうのです。
男酒として有名な灘の日本酒は、ミネラルが豊富なだけではなく、鉄分の少ない水を使っています。
ミネラルを多く含む伏流水が
よく使われる
伏流水(ふくりゅうすい)とは、地上から地下に流れ込んだ水のことです。
何層もの地層を巡る伏流水は、まさに天然のろ過が行われた高品質の水と言えます。
地下を流れる中で、土壌のミネラルを多く含んでいるので、日本酒造りに最適な水なのです。
酒蔵では、伏流水を手に入れるために井戸を掘ることも珍しくありません。
日本酒の味は水で大きく変わる
「水の成分で本当に日本酒の味が決まるの?」と思う方も多いかもしれません。
しかし、実は日本酒の8割が水であることをご存知でしょうか。
日本酒は、「米、米こうじ、水、(醸造アルコール)」のように、少ない原料で作られています。
その中で8割を占めている水は、日本酒の味に深く完成するのも納得ですよね。
水質基準は水道水より厳しい
世界的に見ても、日本の水道水は高基準をクリアした素晴らしい水です。
約200種類もの検査を定期的に行い、「大腸菌」「水銀」「ヒ素」などの数値は、WHOが定めた基準よりも下回ることもしばしば。
しかし、日本酒造りで使う水は、この水道水よりはるかに厳しい基準が設けられているのです。
特に差がある要素をまとめてみました。
厳密に定められた水が
日本酒に使われている
【酒造用水と水道水の基準差】
|
酒造用水 |
水道水 |
鉄 |
0.02ppm以下 |
0.3ppm以下 |
マンガン |
0.02ppm以下 |
0.05ppm以下 |
亜硝酸性窒素 |
検出されない |
10ppm以下 |
これだけ見ても、酒造用水はどれだけ綺麗な水なのかが分かりますね。
加えて、水道水には定められていない、
- アンモニア性窒素
- 細菌酸度
- 生産性菌郡
に関しても、酒造用水では基準がきっちりと決まっています。
少し難しい話になりましたが、つまり世界に誇る日本の水道水以上に、良質な水が日本酒造りに使われているのです。
日本酒に使われる水の種類とは?
厳しい基準をクリアした水だけで造られる日本酒ですが、具体的にどんな場面で使われているのでしょうか?
日本酒造りには
ほぼ酒造用水が使われる
先ほどの厳しい条件をクリアした酒造用水が使われるのは、これら5つの場面です。
- 洗米水
- 浸漬水
- 仕込み水
- 割り用水
- 瓶詰め用水
①洗米水・浸漬水
精米を終えたお米は、酒造用水を使って洗われ、親戚されます。
日本酒の基本となる作業のため、必ず綺麗な水を使わなければいけないのです。
②仕込み水
お米の糖分をアルコールに変える酒母(しゅぼ)や、日本酒の味わいを決めるもろみ造りの時に入れる水です。
酒母を作る時に、ミネラルの高い硬水だと酵母の動きを早めてくれます。
また、もろみ造りでも硬水か軟水を使うかで、骨格のしっかりとしたお酒か、優しくなめらかなお酒になるかが変わってきますよ。
③割り用水
もろみを絞って酒粕と日本酒に分けた後、お酒の度数や香味のバランスを調整するために水を加えます。
元々18~20度の度数だった日本酒が、割り水を入れることで15~16度にすることができるのです。
ちなみに、割り水をしていないお酒は原酒といい、日本酒独自の力強さを楽しめるお酒ですよ。
④瓶詰め用水
割り用水で日本酒を調整した後、アルコールと水が結びつくように寝かせます。
この熟成期間を経て、瓶詰めをしてから出荷になるのです。
瓶は出来上がった日本酒を注ぐ大切な容器と言えます。
このため、一升瓶1000本あたり約6kg必要と言われる水も、酒造用水が使われているのです。
実は水道水も使われている
日本酒を完成させるために直接関係する水は、全て酒造用水です。
しかし、
- 釜や桶を洗浄する水
- 道具を熱湯殺菌する水
- 酒造内を掃除するための水
など、主に掃除のために水道水は使われているのです。
このように水道水が使えるのは、世界的に見ても安心安全の水だからですね。
これらの雑用水と呼ばれる水と、酒造用水を合わせると、なんと白米重量の30~50倍の水を使っていると言われています。
日本酒と水は切っても切れない仲だった!
日本酒は、水の硬度によって大きく味が変化します。
また、不要な要素が含まれた水を使うことで味わいが落ちてしまうことも…。
美味しい日本酒を造るためには、美味しい水の存在が非常に大切なのです。
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