ブランデーとは?原料と種類、ウイスキーとの違い、製造方法を知ろう
エレガントで高級なイメージのあるブランデーですが、どのような特徴を持つお酒かご存じでしょうか。ウイスキーとブランデーはどこが違うのか、よくわからないという人もいるかもしれません。
この記事ではブランデーの原料や種類、ウイスキーとの違いや製造方法について、わかりやすく解説します。
ブランデーとは
ブランデーとは、もともとブドウを主原料に造られた蒸留酒を意味していましたが、現在ではブドウ以外のフルーツを主原料とする蒸留酒もブランデーの一種とされています。
ブランデーの語源はフランス語の「Vin Brûlé(ヴァン=ブリュレ)」です。
もともとブドウのワインを蒸留したお酒を「焼いたワイン(Vin Brûlé)」と呼んでいました。
それをオランダ商人が取り扱うときにはオランダ語で「Brandewjin(ブランデージン)」と呼ばれ、さらにイギリスで流通するときは英語で「Brandy(ブランデー)」と呼ばれるようになりました。
なぜ、ワインを蒸留してみようと思いついたのでしょうか。
その理由として、以下のようなエピソードが伝わっています。
今から300~500年前にフランスのコニャック地方からオランダへワインを輸送していた際にワインが酸っぱくなってしまい、そのままでは売り物にならないため試しに酸っぱいワインを蒸留してみました。
すると、意外なことに香り高いお酒になったことからブランデーが誕生したと言われています。
ブランデーのアルコール度数は40~50%程度で、ウイスキーと同じくらいです。原料のフルーツに由来する甘く芳醇な香り、クセが少なくまろやかな味がブランデーの特徴です。
ブランデーの原料と種類
ブランデーはブドウを主原料とするものが一般的で、多くの銘柄があります。
なかでもフランス・コニャック地方産の「コニャック」、ガスコーニュ地方の「アルマニャック」は、AOC(原産地統制呼称法 Appellation d'Origine Controlee)によって格付けされる有名銘柄です。
また、ブドウ以外のフルーツを主原料とするブランデーを総称して「フルーツブランデー」、フランス語で「Eau de vie fruitsオー・ド・ヴィー・フリュイ」と言います。
主な原料はリンゴ、サクランボ、スモモ、木イチゴ、洋ナシなどです。
使われる原料によってブランデーの名称が変わります。
ブランデーの種類 |
原料 |
主な産地 |
コニャック |
ブドウ |
コニャック地方(フランス) |
アルマニャック |
ブドウ |
アルマニャック地方(フランス) |
カルヴァドス |
リンゴ |
ノルマンディー地方(フランス) |
キルシュヴァッサー (オー・ド・ヴィー・ドゥ・キルシュ) |
サクランボ |
シュヴァルツヴァルト地方(ドイツ)、 フランス |
スリヴォヴィッツ |
プラム(スモモ) |
中欧・東欧諸国 |
フランボワーズ (ヒンベアー) |
木イチゴ |
アルザス地方(フランス)、 シュヴァルツヴァルト地方(ドイツ)など |
ポワール |
洋ナシ |
ノルマンディー地方(フランス) |
オープストラー |
リンゴと洋ナシ |
チロル地方(ドイツ、オーストリア)など |
ブランデーとウイスキーの違い
ブランデーもウイスキーも蒸留酒ですが、原料や製造工程の違いにより、味や香りにそれぞれの個性が生まれます。
以下では、それぞれの違いについて詳しく解説します。
原料の違い
ブランデーとウイスキーでは、原料がそれぞれ異なります。
ブランデーは白ブドウやリンゴ、サクランボなどのフルーツから造られることに対し、ウイスキーは大麦やライ麦、小麦、トウモロコシなどの穀物から造られるお酒です。 ]
また、原料を発酵させてアルコール化するためには糖分が必要ですが、ブランデーの原料となるフルーツには、もともと糖分が豊富に含まれています。
それに対しウイスキーの原料である穀物に含まれる糖分は、フルーツに比べてわずかです。
その違いが次で説明する製造工程の違いにつながっていきます。
製造工程の違い
ブランデーは糖分を多く含むフルーツを発酵させたあと、アルコール分を蒸留させて造られます。
それに対しウイスキー造りでは発酵・蒸留の前に「糖化」という工程が必要です。
糖化されることで、デンプンは糖分に変化します。麦には糖化を促す「アミラーゼ」という成分が含まれており、発芽によって活性化します。
ウイスキーを造るためには原料の穀物を発芽させてデンプンを糖化する必要があるのです。
また、蒸留後の熟成工程においても、ブランデーとウイスキーは異なります。
ブランデーは、AOC銘柄であるコニャック・アルマニャック・カルヴァドスを除き、木樽での熟成が義務づけられていません。
原料のフルーツの風味を生かしたい場合は木樽を使わずに熟成させることもあります。
それに対し、ウイスキーはオーク樽で長期間熟成させることが主流です。
熟成期間中に木樽からタンニンなどの成分がウイスキーに溶け込み、独特のスモーキーなフレーバーや琥珀のような色が加わります。
ブランデーの製造方法
ブランデーの製造方法については上でも簡単に触れましたが、ブランデーの製造方法には以下の3つの方法があります。
●果汁を発酵させてもろみを造り、蒸留する
●果実を圧搾し糖分や酵母を加えて発酵させ、蒸留する
●果実をスピリッツに浸漬し、蒸留する
それぞれの製造方法について、詳しく解説します。
果汁を発酵させてもろみを造り
蒸留する
ブドウやリンゴなど、糖分を豊富に含むフルーツからブランデーを造る場合は、糖分や酵母を加えなくても果汁の糖分だけで十分な発酵を得られます。
発酵してできたもろみを蒸留し、熟成させればブランデーの完成です。
コニャックやカルヴァドスはこの製造方法で造られています。
ドイツでは、この製造方法で造られたブランデーを「○○wasser(ヴァッサー)」と呼びます(キルシュヴァッサーなど)。
ヴァッサーとは「水」「蒸留酒」を意味するドイツ語です。
果実を圧搾し糖分や酵母を加えて
発酵させ蒸留する
糖分が少ない果実をブランデーの原料に使う場合に使われる製造方法です。
果実に圧力を加えて絞ってから糖分や酵母を加えて発酵させ、蒸留・熟成させます。
チェコ・スロバキアやハンガリーなど中欧・東欧で造られるスリヴォヴィッツ(プラムブランデー)はこの製造方法を用いています。ス
リヴォヴィッツの場合はプラムを丸ごと圧搾して仕込むため、種に含まれる風味もブランデーの味に影響すると言われています。
果実をスピリッツに浸漬し
蒸留する
こちらも木イチゴやプルーンなど、発酵させるために十分な糖分を含まない果実でブランデーを造る場合に用いられる方法です。
最初にアルコール度数70%程度のスピリッツに数日から数カ月間、果実を漬け込みます。
スピリッツに果実の香味がしっかりと溶け込んでから蒸留するため、新鮮な果実のフレーバーを感じられるブランデーになることが特徴です。
ドイツでは、この製造方法で造られたブランデーを「○○geist(ガイスト)」と呼び、上記の「○○wasser(ヴァッサー)」と区別されています。
ブランデーはさまざまな種類があり奥が深いお酒
さまざまなフルーツから造られるブランデーは、原料の風味を生かした甘く豊かな香りやまろやかな口あたりなど、たくさんの魅力を持つお酒です。
アルコール度数はウイスキーと同じ40~50%ですが、ウイスキーよりもクセが少ないため飲みやすいかもしれません。
ウイスキーを飲んでみて「舌にピリピリと感じる刺激が苦手」と感じた方は、ブランデーを試してみてはいかがでしょうか。
ブドウやリンゴ、プラムなど原料によって味わいも変わるため、好みのブランデーを見つける楽しさもありますよ。
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