山廃仕込みって何?造り方や味わいの特徴について分かりやすく解説します!
日本酒ラベルによく書かれている「山廃仕込み(やまはいじこみ)」。
「山廃仕込みってなんだろう?」「山廃(やまはい)ってどんな味なんだろう?」と思っている人も多いでしょう。
そこで今回は、山廃(やまはい)とは?・山廃仕込み(やまはいじこみ)とはどんな日本酒なのか、造り方から味わいの特徴までしっかり解説していきます。
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山廃(やまはい)を知るにはまず生酛造り(きもとづくり)を知るべし
山廃仕込みとは、「生酛造り(きもとづくり)」から派生した日本酒の仕込み方法を表す言葉です。
では、山廃がどんな仕込みかを説明するために生酛造りと関連しながら説明していきましょう。
「生酛造り」とは
生酛造り(きもとづくり)とは、大量のお米をスムーズに発酵させるために必要な酒母造りに関係する言葉です。
そもそも、酒母は造り方によって「生酛(きもと)」「速醸酛(そくじょうもと)」と2種類に分けることができます。
生酛は自然の力で生成された乳酸菌を段階的に加えられた酒母に対し、速醸酛は酒母造り最初の工程で醸造用の乳酸菌を投入して造られるのです。
日本酒造りにおいて「乳酸菌」は雑菌の繁殖を抑える効果があり、さらにお酒のもととなる酵母のみを培養する作用があります。
その「乳酸菌」を外から添加するのか(速醸酛)、添加せずに米を発酵する過程で自然と乳酸菌を発生させて醸造するのか(生酛)という違いがあります。
生酛造りは、自然界の力を利用することから手間がかかり管理も大変なので、現在は速醸酛を造るところが全体の9割と言われています。
ただ、生酛造りは蔵内に存在するさまざまな乳酸菌を取り組むため、蔵ごとに味わいが異なり複雑な風味を味わえるとファンの人も多いです。
「山廃」と「生酛」の違い
そんな時間と手間がかかる製法の生酛造りにはさらに分類することができます。自然界の乳酸菌を加えて造る生酛系酒母は、「山廃」「生酛」と2種類に分けられます。
生酛は「山卸(やまおろし)」という作業を経て造られる酒母です。
柔らかくなり膨張した蒸し米や麹を、櫂(かい)という棒のようなものですりつぶしていきます。
作業は二人1組で行うなど、重労働な作業でもあります。
そして山廃は、その山卸の工程を無くした作業です。
「山廃」は「山卸」を廃止したもの
山卸は労力を要する作業であることや、山卸を行わなくても成分に違いはないと明治時代に発表されたことから、山廃仕込みは幅広く浸透されるようになりました。「山卸」を「廃止」するから「山廃」と言われています。
人の手で蒸し米や麹蒸し米や麹をすりつぶさなくても、麹自体がお米のでんぷんを糖に変える働きをしてくれているのです。
糖に酵母が作用することで自然と日本酒になっていきます。
山廃ってどんな味がするの?
山廃仕込みとはどんなものかをお話してきましたが、やっぱり大切なのはなんといっても日本酒の味ですよね。
山廃で造られた日本酒はどのような味がするのか、お伝えしていきましょう。
濃厚な旨味と豊かな味わい
もともと、酒母には速醸酛と生酛で分けられているというお話をしました。
速醸酛は液状の乳酸を初期段階で加えることで、品質を簡単に安定させ短期間で日本酒を造ることができます。
このため、存在する微生物が少なく、乳酸菌が生産する副産物もないため、淡麗な味わいになるのです。
一方、生酛は生み出された乳酸を安定させるまでに時間がかかるため、さまざまな微生物や菌が活発に動きます。
その結果、味わい深く風味の強い日本酒に仕上がるのです。
さらに、生酛系酒母の中でも山廃は味の骨格がしっかりしており、濃厚で芳醇な旨みを感じられます。
これは、山廃で育てた酒母が乳酸菌と共生しながら育つことが要因です。
アルコールや熱に強く、旨み成分をあまり使わずに発酵するため、豊かな深みと酸を感じられ、日本酒自体に強く旨み成分が残ります。
おすすめの飲み方
日本酒は香りや味わいによって、「熟酒(じゅくしゅ)」「醇酒(じゅんしゅ)」「薫酒(くんしゅ)」「爽酒(そうしゅ)」と4つに分類されます。
山廃はこの中で、お米の豊かな味わいを感じられ、ふっくらと柔らかい香りを感じられる醇酒(じゅんしゅ)にあたります。
醇酒は香りの立つ温度が、15〜18度、40〜55度が言われていますが、お米の旨みが好きな方はぜひ燗酒で飲んでみてください。
日本酒は温めることでふんわりと風味や香りが広がり、より豊かな味わいを楽しむことができるはずですよ。
一方、日本酒のお米っぽさが苦手な方は15〜18度と常温の状態で飲むのがおすすめ。
純粋に山廃そのものの味わいを楽しむことができるので、まずは常温で楽しんでみるのもいいでしょう。
ただ、日本酒を飲み慣れていない方だと複雑な味わいの山廃は飲みづらいと感じてしまうかもしれません。
「ちょっと苦手かも...。」と感じてしまったら、ぜひ以下の飲み方を試してみてください。
①山廃のお湯割り
【用意するもの】
- 山廃の日本酒:80ml
- お湯:20ml
【作り方】
- グラスにお湯、日本酒の順に入れる
- ゆっくりとかき混ぜたら完成です!
お湯を入れることでアルコール度数が低くなり、さっぱりと飲むことができます。
日本酒とお湯の比率は、8:2がおすすめ。
夏は、お湯を水に変えてみるのもいいかもしれません。
②山廃の飲むヨーグルト割り
【用意するもの】
- 山廃の日本酒:80ml
- 飲むヨーグルト:80ml
【作り方】
- グラスに、飲むヨーグルト、日本酒の順に入れる
- ゆっくりとかき混ぜたら完成です!
もともと酸味の強い山廃は、同じく乳酸菌豊富で酸味の強い飲むヨーグルトと相性抜群。
飲むヨーグルトの甘さとが相まって、ついつい飲みすぎてしまうので注意が必要です。
日本酒が苦手な方や、アルコールの強いお酒が苦手な方もぜひ試してみてください。
山廃仕込みの日本酒 おすすめ3選
飲みごたえのある山廃は、一度ハマったら病みつきになるおいしさです。
しかし、どうせならより良い山廃の日本酒を飲んでみたいですよね。
こちらでは、千葉県が誇るこれぞ!という山廃をピックアップしてみました。
今夜の晩酌として、ぜひ試してみてください。
岩の井 山廃純米大吟醸
1723年に創業した岩瀬酒造は、およそ300年間日本酒造りへと携わってきました。
日本酒に使われる水としては珍しい13〜15の硬度を持つ硬水を使用しています。
仕込み水は硬度が高ければ高いほど発酵を促すと言われているので、他の酒造とは一線を画す日本酒を取り揃えています。
そんな岩瀬酒造の「岩の井 山廃純米大吟醸」は、ワイン好きなら誰もが知っている「ワインアドヴォケイト」誌で100点満点中95点を獲得しました。
全国第2位に輝いたこちらの日本酒は、山田錦を精米歩合40%まで磨き上げて造られたものです。
山廃と聞くと個性の強いお酒のように感じますが、こちらは一緒に合わせる料理の味を邪魔せず引き立ててくれます。
岩の井 山廃辛口純米
「岩の井 山廃辛口純米」は、平成27年に開催された秋の東京国税局鑑評会の「お燗の部」にて、優等賞を受賞した日本酒です。
先程の大吟醸とは異なり、千葉県産の酒造好適米を約70%まで磨き上げた味わいは、しっかりとしたお米の旨みを感じることができます。
酸味と旨みがバランス良く味わえるので、和食、洋食、中華と合わせる料理を問わずに楽しめるでしょう。
硬度の高い仕込み水を使っているからこそ、ロックで飲んでもしっかりと日本酒の味わいが消されません。
木戸泉 本生
高温山廃酛(こうおんやまはいもと)で、天然の乳酸菌と酵母だけを加える独自の手法を編み出した木戸泉酒造。
通常は低温で行う酒母の仕込みを、55℃の状態で発酵させることにより、唯一無二の日本酒が完成しました。
「木戸泉 本生」は本醸造生酒なのでさっぱりとした飲み口が特徴ですが、高温山廃仕込みを行うことでしっかりとした旨みや酸味も感じることができます。
濃厚な日本酒が苦手な方は、ぜひ試してもらいたいスッキリとした山廃のお酒です。
濃厚で豊かな味わいの山廃を飲んでみよう
山廃仕込みの日本酒は、その造り方からしっかりとしたお米の風味を感じさせてくれる日本酒と言えます。
そのまま飲んでも美味しいですが、お湯割りやロックで楽しんでも味が物足りなくならないのが魅力。
ぜひ、この機会に山廃仕込みの日本酒を飲んでみてください。山廃を知ると日本酒をもっと楽しめますよ。
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